「家族は依存症の当事者を突き放して」当事者の切実な訴えが胸を打つ(東京)

3月24日(日)東京都の調布市文化会館たづくりにて、全国ギャンブル依存症家族の会東京が開催された。昨今のギャンブル依存症への関心の高まりを受けて会場にはメディアの取材も入り、同時開催された当事者会参加者とZoomでのオンライン参加者も含めて多くの人が集結することとなった。

まず家族として体験談を語ったのは、全国ギャンブル依存症家族の会奈良の平井さん。息子のギャンブル依存を家族の中だけで解決しようと必死になっていたときの辛さや孤独感を家族会や自助グループと繋がることで癒し、適切な対応を学び、同じ悩みを抱える人たちを助けることで自分自身の回復に繋げ、また地域連携強化のために広く働き掛けを行っていることを話す姿は、自信に溢れていた。

 次に当事者として話をしたのは、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 当事者支援部の辻さん。依存症という病気を正しく理解し自分自身と向き合い真摯に回復を目指す姿は、いわゆる「依存症患者」という言葉の持つ内向きなイメージからはほど遠い。特に印象的だったのは、家族の会メンバーに向けて言った、「依存症の当事者をぜひ突き放してください」という言葉。周りが手助けすればするほど当事者を苦しめてしまうという悲しい皮肉をこれ以上繰り返してはならないと、強く感じた。

 その後は小グループに分かれ、初参加者の現状や困りごとを伺い、当会のメンバーが持っている知識や経験を共有した。家族の会は誰にも相談できなかった問題を分かち合うだけではなく、蓄積されたノウハウを共有しその場でその時に必要な対応を学んで帰れる場なのだ。当事者との関わり方から、適切な対応をしてくれる病院の情報、横領や窃盗など犯罪に手を染めてしまった家族がいる場合の対応までもサポート体制があるのだから、全く手厚いというほかないだろう。

 私が初めて当会に参加したのは、夫の金融機関への借金を全て夫の両親が肩代わりし、今後どのように夫の両親に返していくかまで家族ぐるみで話し合い、医療機関への受診をさせた後で、借金発覚から1ヵ月が経っていた。当時の思考では、まずは借金をなんとかしなくては。そしてその後にギャンブル依存症ということは明白なため医療機関に受診させなければ。そこで専門家の指示に従おうと思っていたし、そんな自分は冷静で適切に対応できていると考えていた。正しい知識を学んだ今なら、それが大きな間違いであったことがわかる。まず私がすべきであったことは、当会か、もしくは都内であればほぼ毎日どこかで開催されている自助グループに出向くことだった。ギャンブル依存症と借金は切っても切り離せない。「借金を他人が解決してくれるわけがないから借金は家族内で解決し、依存症のことは専門家である医師に相談しよう。」「何を調べても肩代わりが一番良くないと書かれているけれど、とは言え利息は日々膨らむわけで、現実問題としては借金をまずどうにかしなくては。」そんな考えは綺麗に捨てるべきだ。借金をどうするかと依存症をどうするかを切り離してそれぞれ対応しようとすることが間違いで、借金問題を含めてどのように対応するべきなのかを当会では教えてもらえる。借金がある状態で当会に参加したならば、ともすればあなたは褒めてもらえることだろう。家族にギャンブル由来の借金がある人がいるならば、借金がある今が、当事者を先が見えない依存症のループから救い出すチャンスだ。もし肩代わりしてしまったならば、全く同じ過ちをしてしまったメンバーが、あなたを支えて正しい道を教えてくれる。

 次回は4月27日(土)13時半よりタワーホール船堀にて、家族の会と当事者の会の同時開催。身近な人のギャンブル問題で悩んでいる方、ここに辿り着いた方は漏れなくぜひご参加ください。

東京都在住 河野