ひとりで抱えず、つながりの中で(奈良)

歴史の息づく古都奈良。春のやわらかな陽射しの中、奈良公園や寺院には多くの観光客が訪れていました。そんな歴史の静けさと観光のにぎわいが交差する町、奈良市のフォレスト スクエアにて、5月18日(日)、ギャンブル等依存症問題啓発週間の特別セミナーが開催されました。

はじめに、奈良県立医科大学精神医学講座教授岡田先生の講演を聞きました。

依存症は誰にでも起こりうる「脳の病」であり、意思の弱さや性格の問題ではないことを丁寧に説明してくださいました。さらに、発達の特性が背景にあることで、依存に結びつきやすい状況が生まれることについても触れられました。中でも、「人とつながり、安心できる仲間がいることが回復には欠かせない」という言葉には、自らの経験とも重なるものがあり、思わず深くうなずいてしまいました。

次に、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 当事者支援部のメンバーと、当会より妻の方の体験談を聞きました。二人の話に共通していたのは、「一人ではどうにもできなかった」という思いです。どうにもならない苦しさの中でメンバーとつながり、少しずつ心を開きながら、正直に自分と向き合ってこられたこと、その一歩一歩の積み重ねが、今のおだやかで前向きな姿につながっているのだと感じました。

ギャンブル依存症というと、「自分には関係ない」と思われがちですが、家族の問題を通して、それがどれほど身近で、誰にでも起こりうるものなのかを、身をもって感じています。だからこそ、今回のセミナーを通して、孤立するのではなく、つながりの中でこそ人は変わっていけるという、そのメッセージが、あらためて心に響きました。安心して話せるメンバーがいるということ。その存在が、どれほど大きな支えになってきたかを、私はこれまで何度も感じてきました。

ギャンブル依存症は、決して一部の人だけの問題ではありません。誰にとっても身近に起こりうることだということを、知っていただけたらと思います。 昨今、大きな問題となっているのがオンラインカジノです。スマホひとつで簡単にアクセスできてしまう危険性や、あたかも国内で合法かのように誤解されている現状には、私たち家族会も強い危機感を抱いています。ギャンブル依存症は、特別な誰かの話ではありません。「もしかして……」と思い当たることがあれば、ひとりで抱え込まず、問題が深刻になる前に、どうかご相談ください。

次回の家族会は、6月29日(日)13:30~ 王寺町やわらぎ会館にて 開催されます。

奈良県在住 和田